日本近代文学会東海支部 第42回研究会案内

日本近代文学会東海支部第 42 回研究会を下記のとおり開催いたします。ぜひ御出席くださいます よう、御案内申し上げます。
      記
【日 時】2011年12月10日(土)14:00~17:30
【会 場】愛知淑徳大学 星が丘キャンパス 1号館5階15A教室
http://www.aasa.ac.jp/guidance/map.html

【内容】
○研究発表 14:00 より
・浪漫主義という鏡―創刊期『少女世界』掲載の田山花袋作少女詩群を巡って
                                     高橋 重美
 80年代から90年代にマルチメディア的に隆盛をみた少女論ブームは、ポストモダニズム楽天性 を反映した知的バブル的側面を多分に有していたとはいえ、近代という時代を問う視座のひとつとして の《少女》を打ち出した功績は争われない。ブームが去った後も、少女雑誌の社会学的な分析や埋もれ ていた少女小説・作家の発掘再評価など地道な研究が続けられ、現在では、広く近代少女表象の歴史的・ 政治的意味を明らかにしようとする動きに発展している。本発表もこの流れの一端に立ち、明治 40 年前 後に『少女世界』に掲載された田山花袋の少女詩群を対象に、近代少女表象の成立期の一面の描出を試 みる。特に《少女セクシュアリティ表象》と呼ばれる、少女の身体を部分的にクローズアップし官能的 に謳い上げる修辞法を支えている浪漫主義と自然主義の共犯関係を、花袋の明治 30 年前後の抒情詩や〈少 女小説〉、41 年の『少女病』『蒲団』などを使って示しつつ、併せて掲載誌である『少女世界』のメディ ア的特徴や掲載形態も考慮することで、〈近代社会システムの中で《少女》に割り振られたジェンダー言 説としての浪漫主義〉について考えたい。

・近代都市東京のモダン空間―『モダン TOKIO 円舞曲』に見られる遊興空間を中心に
                             張ユリ(名古屋大学大学院博士後期課程)
 関東大震災後の東京には、カフェやバー、映画館などの消費・遊興空間が相次いで建てられた。そして、そ のような空間はモボ・モガの存在と共に、モダン文化を象徴するものとして、当時の文学やマスコミなどによ って多く取り上げられた。また、その時期は銀座や浅草などの町を越えた東京という都市への関心も深まって いった時であり、そのような状況の中で『モダン TOKIO 円舞曲』(春陽堂、1930 年)が出版される。
『モダン TOKIO 円舞曲』は、「世界大都會尖端ジャズ文學」と名づけられた企画の第 1 作で、「新興芸術派作 家十二人」による短編小説集である。川端康成の「浅草紅団」や堀辰雄の「不器用な天使」などが収められた この短編集には、東京の遊興空間が、当時モダンと呼ばれた生活を解くキーワードとして用いられていると言 える。これまで、各作品に対する研究はあっても、『モダン TOKIO 円舞曲』を一つの企画として扱った研究は ほぼないと言っても過言ではないだろう。本発表では、『モダン TOKIO 円舞曲』を一つのテキストとして捉え、 近代都市東京の遊興空間についての考察を試みたい。